ジョキンズ

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2020年12月4日(金)

感染管理認定看護師がよく口にする「高頻度接触面」とは?

高頻度接触面」ということば、みなさんご存知でしょうか?

実はこの言葉、感染管理の世界ではよく聞く言葉で、「人の手がよく触れるところ」を意味します。 しかしなぜ、「人の手がよく触れるところ」が感染管理の世界で大事なのでしょうか?

それは菌・ウイルスは人の手を介して感染するからです。

Photo by David Edelstein on Unsplash

いろんな人の手が触れるドアノブ は感染の可能性大…!?

タッチパネルが感染源 !? 高頻度接触面の除菌でアウトブレイクも終息!?

2010年にまめられた論文*1によると、院内で薬剤耐性菌(AMR)の院内感染が発生。

この薬剤耐性菌*2というのは、従来の抗菌薬が効かない非常に厄介な菌で、その予防や治療が困難になるとされています。

そんな厄介な菌が病院内で広まるというのは非常に由々しき自体なのですが、この論文ではわずか1ヶ月でそのアウトブレイクを収束させることができたと報告されています。

その感染を食い止めた方法こそ、高頻度接触面の環境清拭などを含む環境整備です。

*1 環境汚染が原因と考えられた MRSA アウトブレイクの 2 事例と ICT の対応 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsei/25/3/25_3_152/_pdf


*2 薬剤耐性菌(AMR)ついて:
抗菌薬が効かない「薬剤耐性(AMR)」が拡大!一人ひとりができることは?(政府広報オンライン)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201611/2.html

先の論文で紹介されたアウトブレイク の原因は、


  • 1, 人工呼吸器のタッチパネル
  • 2, 患者さんのベットの柵サイドデーブル
  • 3, ドアノブ
  • 4, シャワー時のストレッチャーマット

などが挙げられています。
このうち1〜3は人の手が多く触れる、「高頻度接触面」です。

1〜3の環境清拭を徹底し、4のシャワー時のストレッチャーやマットを患者さんが共有しないようにしたことで、新たな感染を食い止めることができたとしています。

実は高頻度接触面って、こんなにたくさんあります。

「環境清拭」って何をすればいいの?

アウトブレイク は病院内の話ですが、家庭でも同様のことは起こりうります
例えば「子供が風邪をもらってきて家族みんなに感染」「インフルエンザで家族全員ノックダウン」そういった話を聞いたことはないでしょうか。 特に今年は新型コロナウイルスの流行もあります。家庭内感染は、非常に身近な問題です。

では、実際にどうすればいいのでしょうか?

「医師が解説!イラストでわかる新型コロナウイルス対策」でもお馴染みの下間正隆先生のイラストと一緒に、確認していきましょう。

環境清拭1 まずは拭き方をおさらい。全部で3つ!

奥から手前に一方通行。往復ワイパーは汚れを広める可能性があるのでNG
S字を描くように一方通行で拭きましょう。



テーブルはついつい表面だけ拭いて終わりがち。側面と裏面も忘れずに。



筒状のものはぎゅっと握って、一方通行で!

環境清拭2 適切な除菌薬を選ぼう

アルコール、ハイター、他にもいろんな除菌薬・消毒薬がありますが、薬品と菌との相性によって、効果は様々。 アルコールは多くの菌に効果があるとされていますが、ノロウイルスには得意ではありません。 ハイター(次亜塩素酸ナトリウム水)は多くの菌に効くと言われていますが、有効な濃度か確認してから使いましょう。

環境清拭3 汚れをとってから、除菌しよう

環境清拭は二段階で行いましょう。 なぜなら、多くの消毒剤は汚れがあると効果が落ちます。 面倒でも、まずは汚れを落として菌の数を減らし、その後に除菌していきましょう。

環境清拭4 霧吹きなどの噴射ではなく、除菌薬に浸しましょう。

噴射は

  • (1)均一に薬液を撒くことが難しく、除菌効果が不均一になりがち。
  • (2)霧状にすることで、吸ってしまうと体に良くない

と2点の理由で好ましくないとされています。



薬液にたっぷり浸して使いましょう。
また、何度も同じ台拭きやクロスを使うのも、避けた方がいいでしょう。1の往復ワイパーと同じように、汚れを逆に広めてしまう危険性があります。交換品を多数用意するか、使い捨てのワイプ(シート)がおすすめです。



環境清拭にオススメのクロスはマイクロファイバークロス

まずはちょっとでもトライ!

とはいえ、本格的な感染管理をいきなり全部意識して行うというのは、大変かもしれません。
では、ご家庭のいつもの掃除にこんなところ気を付けて実践してみるのはどうでしょうか?


  • ・「往復ワイパーNG、奥から手前に一方通行」は食後テーブルを拭くタイミングや、掃除のタイミングにやってみる。
  • ・いつもの掃除の+αでドアノブや、手すりを拭いてみる。
  • ・例年より、少し多めにクロスを用意してみる。
  • ・霧吹きタイプではなく、消毒剤の原液や使い捨てのシートタイプに変えてみる。

などなど、いかがでしょうか?



聴き慣れない「高頻度接触面」という言葉ですが、 実は家庭内の感染を防ぐ重要な、要素のひとつです。
感染のプロたちが使う「高頻度接触面の除菌」という視点でしっかり対策をして、 楽しい年末年始を過ごしてもらえればと思います。

◆ イラスト著作者紹介

下間正隆(しもつま まさたか)先生

日本赤十字豊田看護大学大学院 感染制御学 教授
医師にして、イラストレーター。下記の著作は、本文だけでなく、全てのイラストを
本人が描いています。

主な著作;
・イラストみんなの感染対策 照林社
・カラーイラストで見る外科手術の基本 照林社
・ホスピタル・クリーニング モレーンコーポレーション

・世界の脅威 CRE学習帳 モレーンコーポレーション  他

下間先生制作の、新型コロナウイルスにも対応した2020年度版感染対策マニュアル

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