ジョキンズ

感染管理の専門家の
知識とノウハウをご家庭に。

Interview

JOKIN’S presents スペシャルインタビュー

教えて、部谷ひだにさん!

Vol. 06
「体と学力は関係する? 呼吸と姿勢の話。」

厳しい勝負の世界に携わる
プロフェッショナルの観点から
感染対策もふくめた健康管理に全般について
話をしていただきました。

profile

部谷 祐紀

Yuuki Hidani

日本でも有数の管理栄養士および鍼灸・マッサージ師の国家資格を持つ日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。2009年より日本オリンピック委員会専任メディカルスタッフとして活動。ロンドン五輪、リオデジャネイロ五輪では2大会連続で日本選手団公式トレーナーとして帯同。東京農業大学栄養科学科講師。「会社のトレーナー」として心と体を整える休養、食事、運動について社内研修や健康コンサルティングを行う。また小学生の娘がいることもあり、小学生の体力低下という社会問題を解決する活動も行っている。現在は東京五輪に向けて忙しい日々を送る。1979年生まれ、広島県出身。

2019年11月22日(金)

vol. 06

体と学力は関係する?
呼吸と姿勢の話。

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小学生の体力低下の問題に取り組んでいます。

スポーツトレーナーの仕事をはじめて約20年。アスリートだけでなく、会社で働く人や子どもたちなど一般の方々に向けて、今までの経験を活かせないかと考えるようになりました。

ありがたいことに、医療施設や企業などからお声がけいただき、講演させていただく機会も増えました。2019年の春からは、横浜のある小学校の体力アップに向けての取り組みもはじめています。全国でおこなわれる体力測定テストの結果が、全国平均を大きく下回っていたとのことで、体力づくりに課題を感じたということでのご依頼。

ジャンプしただけで骨折した子どもがいること、保健室に1日70名の子どもが来室することなど、様々な課題をお伺いしました。どうすれば、解決できるのか。先生方と一緒に解決に取り組んでいます。

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授業前の3分間体操、はじめました。

先生方の声の中に「学力が低い子どもは、精神が安定していないことが多い」「姿勢が悪い場合が多い」といったコメントがありました。姿勢を良くすることが、学力向上と心の安定につながるのではないか。そこで、1時間目の授業前の3分間、カンタンな体操を導入することにしました。

大きく息を吸い込み、ゆっくり吐き出す。お腹を膨らませるよう意識して、お腹の圧を高めることで、内側から腹筋を鍛える。立つ、しゃがむという動作をおこなう。ごくごくシンプルな体操です。

毎日続けることが大事なので、モチベーションの維持が大事。毎日おこなう習慣を定着させるために、僕も時々立ち会っています。慣れてきた高学年にはレベルアップした変化球を投げてみるなど、飽きない工夫も大事です。

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呼吸の要、横隔膜。ちゃんと動かしていますか?

体力低下という子どもたちが抱える問題は、何も本人の責任というわけではありません。環境にも原因があります。昔に比べて遊ぶ場所が減っていること。自由に遊びまわる自由が制限されているなど、環境要因も大きいのです。だからこそ、大人のサポートが必要。

ちなみに、お腹をしっかり膨らませるというのは、ヨガの基本も同じですね。一時期お腹を凹ませるトレーニングやダイエットが流行りましたが実は膨らませることも大切です。呼吸とは、自分の心と体をコントロールするとても大事なものなのです。

呼吸の核となっているのが横隔膜。この横隔膜をしっかり動かすことが大事なんですね。横隔膜には2つの役割があることをご存知ですか?一つが呼吸をおこなうこと。二つ目が体内の圧を高め姿勢を保つことです。どちらかが欠けていると何かしらの問題が生じてくるのです。

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重たいものを持つ時、息を止めるのはなぜ?

たとえば、重たいものを持つ時、息を止めて物を持ちますよね。息を止めることでお腹の圧が高まり姿勢が安定するので重たいものが持てるのです。

姿勢が崩れやすい人は、正しい呼吸ができていない可能性があります。お腹がしっかり膨らんでいない、呼吸が浅いなどが考えられます。

タイトな服のせいで、横隔膜がうまくさがらず、胸と首で呼吸するはめになっている人もいます。余談ですが、女性用下着のガードルも、呼吸に支障が出るほどの締め付けはよくないと言われています。お腹を過度に締めている女性の首、肩こりの原因は呼吸にあることも多いのです。

一方で日本の着物はうまくできていると言われています。重量挙げでベルトをしている人を見たことありませんか。お腹をベルトで支えることで、お腹の圧が高まりやすい状態になり、姿勢も安定するため力を発揮できるのです。着物の帯にもおなじ効果があると言われています。

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呼吸は半オート。だから、自分の意識で改善できる。

人間の体には、自律神経による様々なオート機能が備えられています。それは、交感神経と副交感神経による自分の意識に関わらず勝手に切り替えてくれる機能です。例えば体温や血圧、消化機能の調節などです。一方で、呼吸は半オート機能なんです。好きな時に止めて、意識的にコントロールできるからです。

呼吸のすごいところは、呼吸をあやつることで、交感神経と副交感神経をコントロールできるというところ。吐く時間を長くとると、副交感神経が活発になりリラックス状態に。逆に吸う時間を長くとると、交感神経が活発になります。つまるところ呼吸を操るということは自分をコントロールするということです。

呼吸によって、自律神経をコントロールすることで、リラックスすることもできるし試合前にファイティングスピリットを高めるなどメンタルのコンディション調整もできるようになるのです。

世界のスポーツトレーナー界でも、呼吸や自律神経に着目する方が増えています。わかりやすい例で腰痛があります。「腰が痛いのは、腰の筋肉が弱いからだ」という話を聞いたことがあるかと思います。しかし、よく考えてみると、赤ちゃんは筋肉は弱いけれど腰痛ないですよね?

腰痛の原因は、筋肉が弱いからではなく、呼吸パターンのエラーが姿勢や動作のエラーを作っているからなのではないか、という論調が強まっています。腰痛が気になる方は、ぜひ呼吸に着目してみると良いかもしれません。

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(Vol.07へつづく)