ジョキンズ

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2020年3月11日(水)更新

災害時の感染対策について、ご紹介します。

JOKIN’Sを運営するモレーンコーポレーションは、感染管理専門の会社ですが、社内にエムダット(MDAT:Moraine Disaster Assistance Team)という災害時の感染対策支援をするチームがあります。
MDATは2011年の東日本大震災の発生直後に発足し、被災直後にチームを派遣、その後も国内で自然災害が発生する度に、被災地の感染管理担当者と連携して、現地で感染が蔓延しないようにご支援をしてきました。 熊本震災のご支援からは、日本環境感染学会内に発足した災害時感染制御支援チームDICTのメンバーとして、現地にメンバーを派遣しています。 最近では、新型コロナウイルス感染症への対応として、DICTの後方支援でダイヤモンド・プリンセス号への支援も実施していました。ここでは、これまでの経験をもとに、一般の方々に知っていただきたい災害時の感染対策情報をまとめています。

MDATのミッション・ステートメント
災害で打ちのめされた被災地の方々が、さらに感染で苦しむようなことを許してはならない。

なぜ、被災地では感染予防が重要なのか?

感染予防が必要な理由としては、下記が挙げられます。

1.公衆衛生基盤が破壊され、感染症のリスクが増大する

  • ◎上下水道へのダメージ
  • ◎居住環境の悪化(密集した避難所)
  • ◎病原性微生物、害虫、媒介動物のコントロールの悪化

2. 災害弱者が発生する

  • ◎体力が消耗(免疫力の低下)
    • – 睡眠不足
    • – 栄養不足
    • – 精神的ストレス

これまでの災害時における活動の様子

2011年3月 東日本大震災での対応のようす

2016年4月 熊本震災での対応のようす

保健所・避難所でのトレーニング(熊本震災)

日本環境感染学会・災害時感染制御検討委員会JSIPC-DICTに「JSIPC-DICT賛助企業チーム」が2016年5月発足。感染対策に必要な物資を現地に届けたり、正しい使用方法をレクチャーしたりしています。

被災地・避難所での感染リスクとは?

被災地・避難所での感染リスクには下記のようなものがあります。その時の季節・気温にもより深刻度は異なりますが、様々な感染リスクがあります。

被災地・避難所での感染リスク

病名・状況対策必要な製品
食中毒・急性胃腸炎

(O157、ノロウイルス)

手指衛生
環境衛生
個人防護具
アルコール手指衛生剤
環境除菌ワイプ
サージカルマスク
使い捨て手袋
トイレ・排泄関連

(O157、ノロウイルス)

手指衛生
環境衛生
個人防護具
排泄物の封じ込め
アルコール手指衛生剤
環境除菌ワイプ
使い捨て手袋
ハイジーバッグ
風邪 インフルエンザ 手指衛生
環境衛生
個人防護具
間仕切り
アルコール手指衛生剤
環境除菌ワイプ
サージカルマスク
簡易間仕切り
復旧・復興作業

(破傷風、レプトスピラ症、肺炎)

手指衛生
環境衛生
個人防護具
アルコール手指衛生剤
環境除菌ワイプ
サージカルマスク
使い捨て手袋
N95/DS2

備えておきたいもの ① マスク

まず最初にご紹介したいのがマスク。こちらは専門用語で「サージカルマスク」と呼ばれるものです。

目的

  1. マスクをしている人の唾液などが、外に飛ばないようにするため
  2. 自分の咳による飛び散りを防ぐため(咳エチケット
  3. 自分を血液・体液等の汚染から守るため

*密閉度が限定的なため、粉じんの吸入を防ぐ機能は小さいです。

マスクの選び方は用途によって異なります。

通常の掃除レベルであれば、一般的に販売されているサージカルマスクの着用で問題ありませんが、周囲で重機を使っての作業をおこなっていたり、解体作業をおこなっている場合は、さらに性能の高いマスク・個人防護具が必要になります。アスベストなど人体に有害なものを吸い込んでしまうリスクなどを防ぎます。

リスク適切なマスクの種類マスクの主目的作業内容
低い サージカルマスク マスク着用者が保持している病原菌などの拡散を防ぐ。 損壊した家に一時的に帰る。
通常の掃除
中程度 N95/DS2マスク 空気感染予防(結核など)やアスベスト等の有害物質から自分を守る
粉じんの濃度が高い場合、自分を守る

*顔面との密閉度が重要なため、フィットテストが必要。

周囲で重機などの機械を用いて作業を行っている、粉じんの濃度が高い場所。できれば個人は近づかない
高い PAPR CDC(米国疾病管理予防センター)が推奨する、空気感染曝露リスクの高い処置時着用する電動ファン付き呼吸用防護具。フィットテストの必要なし。 損壊した建物の解体作業

フィットテスト研究会資料より編集

マスクの種類

*N95(DS2)マスクのフィットテスト

空気感染を予防するためには、自分の顔にフィットする「メーカー」および「サイズ」を知っていなくてはいけません。病院では機器によるフィットテストを行っています。

  • フィットテスト(定性、定量)

  • シールチェック

マスクは付け方・外し方が大事。

性能の高いマスクを選んでも、付け方がよくないと効果は半減。隙間ができないように注意して、鼻と顎までしっかり隠すように装着してください。

また、外す際にも、表面を手で触れないように外してください。表面には様々な汚れや細菌がついている可能性があります。

備えておきたいもの ② アルコール手指衛生剤

次にアルコール手指衛生剤。水が止まった場合、手洗いができなくなるため、代わりにアルコール手指衛生剤を使って手指衛生をおこないます。インフルエンザやノロウイルスなどの感染症は手を経由して感染することが多いと言われています。

備えておきたいもの ③ 環境除菌ワイプ

衛生環境が悪化し、水が使えない場合に活躍するのが、環境除菌ワイプです。一般的なウェットティッシュとは異なり、除菌・洗浄が同時にできることが特徴です。薬剤入りのため、人体への使用は厳禁。感染管理の観点から使用の際には手袋をつけて使用するようにしてください。

備えておきたいもの ④ 使い捨て手袋

上記で手指衛生が重要だと書きましたが、菌やウイルスの感染は手指を介して広がることが多く、手指衛生の徹底が必須です。アルコール製剤と並んで大事なのが、使い捨て手袋。水がない状況で衛生的に調理や掃除をおこなうためには必須です。小さい乳幼児がいらっしゃるご家庭は、オムツ交換の際にも必要となるので、常備されることをおすすめします。

備えておきたいもの ⑤ 簡易トイレ

最後がトイレの問題です。水や電気が止まってしまいトイレが使えなくなった場合、どうしたらいいのか。簡易トイレの出番です。水がなくても使用でき、排泄物を固めて汚染拡大を防ぎます。バッグで封じ込めるため匂いも防止できるため、衛生的な環境づくりに欠かせないアイテムです。

編集部よりひとこと。

災害時の感染対策について、簡易的にご紹介させていただきましたが、一番大事なことは物の準備よりも、一人ひとりの心構えだと考えています。
災害時という非日常の中でどうすれば感染しないのか、病気を防ぐことができるのか。大人も子どもも一人ひとりが最低限の知識と対策方法を知っておくこと。JOKIN’Sでは今後とも一般の方々にむけた感染情報を発信していきます。

1週間に一度、3分だけでも十分です。感染対策を学ぶ時間を持っていただけたら嬉しい。

感染管理の専門家として私たちJOKIN’Sは、自分たちにできることを続けていきます。