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医療従事者インタビュー
教えて、黒須さん!
感染管理の専門資格である感染管理認定看護師であり、感染制御学の博士。
海外での活動経験もある黒須一見さんのインタビュー連載第二弾。
第2回目のテーマは、ベトナムの医師と看護師について。
日本とおなじところもあれば、違うところもある。
両国の現場を見て感じることについて語っていただきました。
黒須一見
Hitomi Kurosu
2020年7月3日(金)
日本の病院からベトナムの病院にきて、おなじ医療現場でも様々な違いがあることを実感する日々。その中のひとつに、医師と看護師の関係性があります。
基本的にベトナムの病院は縦社会。医師が上で、看護師が下という序列がハッキリしています。
日本では医療現場においての権限委譲がすすんでいて看護師にも裁量権があったりしますが、ベトナムでは医師の指示をもらわないとできないことがたくさんあります。
たとえば、勉強会においても、看護師が医師に教えるということはありえないこと。看護師が看護師に教えるといったこともありません。教えるのは医師の仕事だという価値観なのです。
しかし、最近少しずつ変わってきているようです。看護師が看護師に教えるという場面を目にすることも。
私が教える対象は基本的には看護師のみなさんです。外国人は縦社会の序列とは関係ないという考え方なので、講師である私が医師かどうかということは関係ありません。
まず、最初にビックリしたのが勉強会をやりますと告知したら、看護師だけでなく医師も参加してくださるということ。
看護師向けの勉強会に医師が参加することは日本ではあまりないことですが、こちらの病院では医師も看護師も集まります。
医師は副業を許されていて*午後はアルバイトに出てしまうことも多いため、勉強会の開催は基本的には朝7時半から。みなさん真剣に聞いてくださるのでやりがいがあります。
*国立病院などの一部に限られます。
勉強会では座学だけでなく、簡単な実験などもおこなっています。たとえば、手にどれくらい菌が付着しているのか調べられる装置があるんですね。それを使って、みんなの手を見てみましょうという企画をやりました。
驚いたのが、いちばん最初にやりたいと手を挙げるのが医師だということ。日本ではまずありえないことです。もっとビックリしたことが、検査の結果、医師の手のひらにはたくさんの菌が付着していることが判明した時のみんなのリアクション。
機械が壊れたのでは?と思うくらいのとんでもない数値が出たのですが、医師も看護師もみんな一斉に大爆笑!
その医師は「手を洗ってくるね」といって、キレイになった手でもう一度検査。数値が改善されて「キレイになった!」と無邪気に喜んでいるのです。
その医師は「今朝顔を洗ってから、一回も手を洗っていなかったんだ」とにこやかに話してくれました。「これからは患者さんと接する時に、きれいな手で触れてくださいね」と注意すると、「わかった、わかった」とニッコリ。
手が汚いですよって注意されて、怒るのかと思いつつ、朗らかにみんなと笑っている。仕組み的には医者が上で看護師が下だという縦社会なのに、こうして勉強会に積極的に参加してくれて、一緒にやってくれて、ノリもいい。
ベトナムの人柄の良さを実感する一コマでした。
(Vol.03へつづく)