感染管理の専門家の
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医療従事者インタビュー
教えて、黒須さん!
感染管理の専門資格である感染管理認定看護師であり、感染制御学の博士。
海外での活動経験もある黒須一見さんのインタビュー。
第1回目のテーマは、感染対策専門の看護師の存在について。
ふつうの看護師さんだった黒須さんが
感染管理に興味を持ったきっかけなどを話していただきました。
※下記内容は2019年秋の取材当時の情報です。
黒須一見
Hitomi Kurosu
2020年1月10日(金)
感染の問題は、世界の医療共通のテーマ。
アジア各国の医療機関においても、いかに感染をおさえるか、感染を広げない環境をつくるかと奮闘しています。
長年、日本で暮らす普通の看護師だった私ですが、ひょんなきっかけでベトナムへ。
感染管理の仕事に従事することになって十二年。海外での活動を経験したからこそ見えてきた「日本」もあります。
医療関係者だけでなく一般のみなさまにとって、お役に立てる内容を話せるかわかりませんが、これまで私が経験したことを、等身大の視点でお話させていただきたいと思います。
病院に「感染対策専門の看護師」がいることをご存知ない方もいらっしゃると思います。最初は私も全然知らなかったんです。
20代から40代まで長く勤めていたのは、ある公立病院。就職時は小児科病棟でしたが、次の職場は手術室でした。
インターネットもない時代だったので、何がなんだかよくわからないまま毎日が過ぎていくようで大変でした。最初は「学べるだけ学んで、早く次の現場にいくぞ!」と思っていたのに、3年で慣れて、結局8年いました。
5年目過ぎた頃に、婦長さんから「あなたがこれから指導する立場になるなら、この研修にいきなさい」と言われました。その研修というのが感染管理の講習。
これが私と感染管理との出会いでした。
期間はみっちり2年間。当時、一緒に講習を受けた看護師さんは、今も第一線でご活躍されている方ばかりで今でもいろんな刺激をもらっています。
2年間の講習ではいろんなことを学びました。専門の医師の話を聞いたり、「アメリカでの手術の時の感染管理のガイドラインはこうなっていますよ」ということを具体的に学んだり。
2000年当時は「アメリカではこんなことやっているんだ!日本って遅れているんだな」と実感しました。手術前はこんな準備をしなくてはいけないとか、こんな耐性菌があるのでこんな風に気をつけようとか、細かくいろいろ決まっているんですよ。純粋に面白いなと思いました。
感染管理認定看護師。
今では、この資格を持つ人も増えてきましたが、当時はそれほどメジャーでもなく、一般の看護師が資格試験を受けやすい環境も整っていませんでした。
興味を持った私は看護部長のところにいって「私このコースにいきたいんですけど、いけますか?」と直談判してみた。病院の制度が整ったこともあり、2004年の日本看護協会の教育過程の学校に通えることに。
私は5期生。当時は20人のクラス*だったので先輩にあたる人は日本で80人しかいないような時代です。
(*私の在籍時より30名に増員されました。)
ある日、面白そうな学会がアメリカで開催されると知って「どうやったらいけるんですか?」と聞いてみたこともありました。日本の学会も1回しか行ったことないのに、アメリカの学会に行きたいなんて。我ながら大胆だと思いますが、それくらい感染のことが面白いと思ったんです。
私が資格を取った2000年代はまだ少数だった感染管理認定看護の数も、2019年現在では約3000人に。アルコール手指消毒剤を設置するなどの環境づくり、保健所や介護福祉施設との連携、感染症患者が見つかった時の様々な対応、病院内での講座開催など、感染防止・拡散防止のための様々な活動をおこなっています。
病院の見えないところでコツコツ活動。裏方として活動する感染管理認定看護師さんの仕事を、一般の人が見ることはないかと思いますが、病院を支える縁の下の力持ちとして頑張っていることを、少しでも知っていただけると嬉しいなと思います。
(Vol.02へつづく)