ジョキンズ

感染管理の専門家の
知識とノウハウをご家庭に。

Interview

JOKIN’S presents スペシャルインタビュー

教えて、部谷ひだにさん!

Vol. 05
「免疫を高めるアスリートの食事。」《後編》

厳しい勝負の世界に携わる
プロフェッショナルの観点から
感染対策もふくめた健康管理に全般について
話をしていただきました。

profile

部谷 祐紀

Yuuki Hidani

日本でも有数の管理栄養士および鍼灸・マッサージ師の国家資格を持つ日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。2009年より日本オリンピック委員会専任メディカルスタッフとして活動。ロンドン五輪、リオデジャネイロ五輪では2大会連続で日本選手団公式トレーナーとして帯同。東京農業大学栄養科学科講師。「会社のトレーナー」として心と体を整える休養、食事、運動について社内研修や健康コンサルティングを行う。また小学生の娘がいることもあり、小学生の体力低下という社会問題を解決する活動も行っている。現在は東京五輪に向けて忙しい日々を送る。1979年生まれ、広島県出身。

2019年11月1日(金)

vol. 05

免疫を高める
アスリートの食事。
《前編》

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アスリートの食事の基本とは?

炭水化物を制限するダイエットが流行っていますね。この方法についてはいろんな意見があります。アスリートの食事に関して言えば、実は糖質の補給はとても大切だと言われています。やはり極端な制限やアンバランスな食事はいいとは言えないんですね。

基本は、欠食しない、偏食はしない、主食、主菜、副菜、果物、乳製品などバランスよく、活動に合わせた適切な食事量をとる。その中でも糖質は体や脳のエネルギーになる大事な栄養素です。なぜなら、トレーニングで疲れた体を回復させるためには活動に合った糖質補給は必須だからです。

糖質の食べ過ぎやその「種類」によって、血糖値が急上昇してしまい、様々な問題を引き起こすことはもちろん注意すべきかと思います。「種類」というのは、白米よりも玄米や雑穀米がよいといったことです。白糖よりも三温糖や黒糖、うどんよりもお蕎麦の方が血糖値の上昇がゆるやかです。

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パンダが笹、コアラがユーカリを食べる理由。

血糖値の観点から白砂糖や小麦など精製された糖質はなるべく控えるといいでしょう。おすすめの糖質は玄米や雑穀米。なぜなら、食物繊維が多く血糖値が急上昇を起こさないことに加えて、ビタミン、ミネラルが豊富だからです。また、ごはんを食べると幸せな気持ちになりますよね。「ごはんが食べられないのはなんだか寂しい!」と感じる人も多いのではないでしょうか。

東洋医学の食養生の考えには、その土地で生まれたもの、旬のものは体によいという考え方があります。パンダが笹を食べて、コアラがユーカリを食べる。日本人の体、日本の自然と気候から考えて、日本人にはお米があっているのではないかと僕は思います。

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アスリートが食べてはいけないものってなに?

僕の携帯には選手からの電話がよくかかってきます。「これは食べていいですか?」「これ飲んでいいですか?」と食に関する質問が多い。なぜかというと、よくわからないのを食べてしまい、ドーピングに引っかかることもあるんですよ。たとえば、市販のエナジードリンク類、これはドーピングには引っかかりません。いかにも効きそうなパッケージだったりしますが、実は問題ないんですね。

逆に、葛根湯はドーピングにひっかかります。漢方だから大丈夫というイメージを持っている方もいるかもしれませんね。ドーピング検査にひっかかるとうことは、それだけ効き目があるという証だったりもします。

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薬ではなくラムネを飲んで、病気が改善?

プラセボ効果という言葉をご存知ですか?
別名、偽薬効果。本当は違うのに「これは特効薬です」と聞かされて飲んだ人が、効くと思い込んだことで効果が出るという作用のことを言います。

実際には、効き目ある成分が何も入っていなくても、薬ではなくラムネだったとしても、およそ2割の人には効果が出るというのです。「これを食べれば痩せる」「これを飲めば風邪が治る」たとえ、科学的根拠がなくても、効果が出ることがある。思い込みの力、すごいですよね。

なぜ、プラセボ効果の話をしたかというと、心の作用って案外大きいんですよということをお伝えしたかったからです。

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アスリートは機械じゃない、人間だから。

スポーツの現場では、エビデンス・科学的根拠をとても大事にしています。食事などの日常生活のなかでも、これはやってはいけないというルールも多い。ほとんどが科学的根拠にのっとったルール・規定だったりするわけですが、実際におこなうのは人間ですよね。やっぱり、ルールに縛られすぎると人は窮屈にもなるものです。

「これはダメ、あれもダメ」と禁ずることは簡単ですが、心がついてこないと逆効果になることもあります。すぐれたトレーニング方法があっても、本人がその気にならないとやはり成果にはつながらない。食事に関しても同じです。たとえ教科書通りにやっても、本人が嫌だったら効果は半減。

感染予防にしても、バランスのよい食事に関しても、正しい理想があったとしても、心が窮屈にならないように、マイペースで取り組めるといいなと思います。アスリートも僕たちも機械じゃない、人間ですから。

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(Vol.06へつづく)