ジョキンズ

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Interview

医療従事者インタビュー

教えて、黒須さん!

Vol. 02
「未知なるウイルスとどう戦う?」

感染管理の専門資格である感染管理認定看護師であり、感染制御学の博士。
海外での活動経験もある黒須一見さんのインタビュー。
第2回目のテーマは、未知なるウイルスと戦う舞台裏について。
SARS、新型インフルエンザ、エボラ出血熱など、
当時のエピソードも交えつつ話していただきました。

profile

黒須一見

Hitomi Kurosu

感染管理認定看護師 国立国際医療研究センター 客員研究員 1990年より看護師として勤務。2005年に感染管理看護師(CNIC:Certified Nurse in Infection Control)の資格を取得。2008年から5年間大学院に通い、修士・博士課程修了。2017年から2019年にかけて、ベトナムの医療施設において感染に関する運営管理・管理能力向上支援プロジェクトに参画。
※下記内容は2019年秋の取材当時の情報です。

2020年1月17日(金)

vol. 02

未知なるウイルスと
どう戦う?

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2003年に世界を襲ったSARS、覚えていますか?

感染管理認定看護師の資格を取るために学校に通う一年前の2003年、世間を騒がせたのがSARS (重症急性呼吸器症候群)でした。世界で8000人もの感染者が発生。WHOからグローバルアラートが出されたのです。

これまでに報告されたことのない新しいウイルスの猛威に世界が混乱。
当時はちょうど薬剤耐性菌という抗生物質が効かない菌への対応策にも頭を悩ませはじめた頃で、感染管理の関係者は、未知なる菌やウイルスに敏感になっていた時期でもありました。

kv2
未知なる敵から、患者さんを守れるのか。

感染者が出た時に病院としてどう対応するか。
早く原因を見つけ出して、対応しないといけない。
いざという時、のんびりしている余裕はありません。私たちがしっかり学んで対応できないと大変なことになってしまう。

病院には感染症患者だけではなく、様々な患者さんがいます。免疫が低下しているため感染が生死に関わる状況の患者さんがたくさんいらっしゃる。
まだ資格取得前の勉強中の身でしたが、自分たちの仕事の重さを実感。しっかり学ばなければと思ったこと、今でもよく覚えています。

kv2
2009年、新型インフルエンザでマスコミ殺到。

2009年の新型インフルエンザの時も大変でした。
私が勤めていた病院は空港の検疫で問題があった人が運ばれてくるような病院だったので、当時は保健所に検体を渡し、東京都で検査してもらって…といった仕事を繰り返していました。

疑いのある人を検査するものの、陰性、陰性、陰性。
空振りが何件も続いていた中で、あるアメリカ帰りの女性に陽性反応が! 夜遅い時間にも関わらず、病院にはテレビ関係者がどっと押し寄せました。その時21時くらいでしたが、なんと22時のニュースで放送したいのだと言うのです。すごいスピード感!

kv2
入院患者さんたちが、テレビで知ったら動揺してしまう!

事前に対応策を考えていたため、病院として混乱することはなかったものの、マスコミの方々が凄まじいスピード感でニュースをつくる裏側を見て圧倒されてしまいました。そして、感染対策だけでなく、メディア対応や報道に対する患者さんケアも重要だぞと痛感したのです。

たとえば、入院している患者さんは感染症患者の受け入れのことを知らないのにテレビで見たらびっくりしちゃいますよね。
「うちの病院大丈夫?」「自分も感染するのでは?」 と、余計な心配をさせてしまう。
その時は遅い時間帯のニュースだったので、見ていた人は少なかったのですが、翌朝さっそく入院患者さんたちにアナウンス。
「病院ではしっかり対策しているから安心してください」といった内容のチラシを配ったりして対応しました。


kv2
2014年、エボラ出血熱。感染者逃走疑惑で感じたこと。

アフリカで流行がはじまったエボラ出血熱。感染すると重症化しやすく、しばしば死にいたることもある怖い感染症です。
この時も加熱するマスコミ報道の裏側で、ちょっとした事件がありました。

アフリカ帰りの男性が、エボラ出血熱に感染の疑いがあったので隔離されなければならない状況にあったものの自宅で熟睡してしまっていたそうで、長時間連絡が取れず、逃走したのではないかと報道されてしまったのです。

保健所の人たちは患者さんを安全に運ばなきゃいけないし、患者さんのプライバシーも守らなきゃいけないし、病院と連携しなければいけない。
病院は、感染者の治療にあたりつつ、通院・入院している患者さんの安全も守らなきゃいけない。
病院全体で連携して、自治体が保健所など、みんなで連携していかないといけない。

感染のことだけでなく、メディア対応や自治体や保健所との連携なども重要な仕事であると改めて感じた一件でした。

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(Vol.03へつづく)