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Interview

医療従事者インタビュー

教えて、黒須さん!

Vol. 03
「海外渡航時に気をつけたいこと。」

感染管理の専門資格である感染管理認定看護師であり、感染制御学の博士。
海外での活動経験もある黒須一見さんのインタビュー。
第3回目のテーマは、海外渡航時に気をつけたいことについて。
輸入感染症対策の仕事も長く経験された黒須さん。
海外渡航での感染者や感染疑いのある方との関わりのなかで、
気づいたこと、注意してほしいことについて語っていただきました。

profile

黒須一見

Hitomi Kurosu

感染管理認定看護師 国立国際医療研究センター 客員研究員 1990年より看護師として勤務。2005年に感染管理看護師(CNIC:Certified Nurse in Infection Control)の資格を取得。2008年から5年間大学院に通い、修士・博士課程修了。2017年から2019年にかけて、ベトナムの医療施設において感染に関する運営管理・管理能力向上支援プロジェクトに参画。
※下記内容は2019年秋の取材当時の情報です

2020年1月24日(金)

vol. 03

海外渡航時に
気をつけたいこと。

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「輸入感染症」について、知っていますか?

日本国内に常在せず、世界からウイルス、細菌などの病原体が持ち込まれて問題となる感染症のことを「輸入感染症」と言います。よく知られている輸入感染症に、コレラ、マラリア、デング熱、ジカ熱などがあります。2015年に日本が排除状態になったことから麻疹もここにあてはまります。

日本国内でも多くの感染者が報告されている、結核や、風疹、ノロウイルスなども、世界からの帰国者が日本に持ち込むことも多いため、広義の意味で輸入感染症と言われることもあります。

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2015年、猛威をふるったMERS(中東呼吸器症候群)とは?

エボラ出血熱の翌年に話題になったのが、MERS(中東呼吸器症候群)。サウジアラビアなどの中東地域で流行し、致死率が高く、2015年には韓国で多数の死者が出た怖い感染症です。

MERSコロナウイルスが原因で起こる感染症ですが、ラクダが感染源となり感染が拡大。
たとえば、ドバイなど中東に旅行に行ってラクダに乗って記念写真を撮る、なんてシチュエーションありますよね。乗らなかったとしても触れたりした場合は、ラクダの唾液の中にもMERSの混入物が入っている場合もあるので、接触による感染の危険性があります。

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「ラクダに乗りましたか?」と質問されてハッとする帰国者たち。

輸入感染症が国内に入り込むことを阻止するために、空港の検疫では帰国者の状態を入念にチェックしています。
帰りの飛行機で寒気がしてきて、検疫のサーモグラフィーで引っかかってしまい、Tシャツ・短パン姿でスーツケースを持ったまま病院に連れてこられる帰国者の方も。

検査の結果、インフルエンザだったりするケースも多いのですが、いろんな可能性を考えてヒアリングします。
「滞在は何日から何日までですか?」 「どこで何をしましたか?」 など、現地での行動について伺うのですが 「ラクダに乗りましたか?」 とピンポイントに質問して、そこでようやく感染リスクに気づく方がとても多いです。

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空港の注意喚起ポスターは見られていない?

渡航前の人も注意してもらえるように、出国時にもMERSの流行を知らせるポスターなどは掲示してあるんですよ。でもあまり見られていないんだなということを実感します。みんな自分には関係のないことだと思い込んでいるんですね。

機内でも到着間際にアナウンスが流れているんですよ。
シートベルト着用サインが出た後、エボラが流行しているのでコンゴに行った方は検疫所にいってください、とか。

最近ではビーフジャーキーなど肉製品の検査もありますよね。家畜の病気・感染症などで持ち込みできない国や地域があるんですね。いろんな警告がされていますが、人って案外聞いていない(笑)


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2020年、東京オリンピックがきっかけになれば。

台湾のチャイナエアラインは工夫しているなと思いました。
アナウンスだけじゃなくてテレビ画面に映してわかりやすく注意喚起しているんです。
帰国時の検疫でラクダのポスターを見てギョッとする前に、どうやったら気をつけてもらえるか。無関心を前提とした意識づくりは感染管理の大きな課題だと感じます。

2020年は東京オリンピックが開催されますが、海外からたくさんの方が訪れるということは、病気が持ちこまれる可能性も高まるということです。
このタイミングをきっかけに、輸入感染症の対策、一般の方の感染予防の意識が高まってくれると嬉しいなと思います。

▼チャイナエアラインの案内

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編集部追記

帰国されたばかりの黒須さんとお話しさせていただく機会があり、今回の新型コロナウイルス肺炎について以下のようにお伺いいたしました。
*下記情報は2020年1月21日現在のものです。最新情報を確認するようにしてください
日々報道されている新型コロナウイルス肺炎ですが、現在日本では多くの感染者が確認されておらず、まずは冷静な対応が心がけましょう。
情報収集も大切ですが、専門家の情報発信を注視しましょう。

<黒須さんオススメ記事>
YAHOOニュースでも投稿されております、国立国際医療研究センター・国際感染症センター勤務の忽那賢志先生と神戸大学教授の岩田健太郎先生の記事をお勧めいただきました。
以下現状の最新記事2点のリンクを掲載させていただきます。(編集部)

● マスクの正しい使い方 今こそ見直そう (2020年1月23日公開)
● 新型コロナウイルス感染症の現状と評価 (2020年1月21日現在)
● 中国の新型コロナウイルス肺炎 見えてきた特徴は (2020年1月23日現在)

(Vol.04へつづく)