ジョキンズ

感染管理の専門家の
知識とノウハウをご家庭に。

Interview

JOKIN’S presents スペシャルインタビュー

教えて、部谷ひだにさん!

Vol. 07
「勘違いしがちな、体と健康のあれこれ。」

厳しい勝負の世界に携わる
プロフェッショナルの観点から
感染対策もふくめた健康管理に全般について
話をしていただきました。

profile

部谷 祐紀

Yuuki Hidani

1日本でも有数の管理栄養士および鍼灸・マッサージ師の国家資格を持つ日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。2009年より日本オリンピック委員会専任メディカルスタッフとして活動。ロンドン五輪、リオデジャネイロ五輪では2大会連続で日本選手団公式トレーナーとして帯同。東京農業大学栄養科学科講師。「会社のトレーナー」として心と体を整える休養、食事、運動について社内研修や健康コンサルティングを行う。また小学生の娘がいることもあり、小学生の体力低下という社会問題を解決する活動も行っている。現在は東京五輪に向けて忙しい日々を送る。1979年生まれ、広島県出身。

2019年12月6日(金)

vol. 07最終回

勘違いしがちな、
体と健康のあれこれ。

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ストレッチは、逆効果?

運動前にはストレッチをすること。これまで当たり前に言われてきた常識が、今変わりつつあります。普通のストレッチは、筋肉を数十秒かけて伸ばす、いわゆるストレッチをスタティックストレッチと言います。このやり方だと筋肉が伸びきってしまう可能性があり、運動前に行うと逆にケガのリスクが高まります。筋肉はゴムと同じで伸びきってしまうと縮みにくくなるのです。

そこで登場したのが、運動前はダイナミックストレッチという考え方。筋肉を伸ばすことが大事なのではなく、筋肉の弾力を増すことが大事だという考え方にのっとった方法です。

ラジオ体操の動きを思い出してください。伸びたり、縮んだり。ぴょんぴょん飛んだりしますよね。あれは、ダイナミックストレッチの考え方なんですよ。

運動前はダイナミックストレッチで筋肉を伸び縮みさせて弾力を高める、使う準備をする。運動後は使って硬くなった筋肉をスタティックストレッチでゆっくり伸ばして元の硬さにもどす。目的によって使い分けできるといいですね。

ちなみに前回お伝えした小学校での取り組みの一つで、体育の準備体操は怪我予防の目的でダイナミックストレッチを導入しました。

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心と体はつながっている?

心が弱っている人は体を鍛えたほうが良いという考え方があります。体を鍛えているうちに心も上向いてきますよ。元気だから上を向くのではなく、上を向くから元気になるんだ。坂本九さんの「上を向いて歩こう」の歌詞のような理論ですね。

よくある精神論かと思いきや、実はそうではありません。目を上に向けると、鼻から息をすることになる。呼吸をしやすい目線になるんですね。呼吸がしやすくなると横隔膜がしっかり動き腹圧が上がり姿勢がよくなったり、内臓の血流もよくなます。実は体のメカニズムとしても理にかなっているんです。

人間の体はうまくできていて、動かすとよく動くようになります。人間の骨の形は、二足歩行で歩きやすくなっていますし、呼吸が激しくなると、肩が動いたりすることにも、全部理由があります。ちなみに、歩くだけも考えがまとまったり、気分が改善することは経験のある方も多いのではないでしょうか。

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怖い上司の前では、「伸び」なんてしにくい。

ただ、仕事柄など、本来の使い方とは違う使い方をしたりすることで、ゆがみが生じたりすることもあります。人間が木ノ実を拾って食べていた時代と、デスクワークでパソコンに向かっている時代とは生活スタイルが全然違いますよね。

「どんな姿勢ですわったらいいですか?」という質問を受けることもあります。そもそも、人間の体は8時間座りっぱなしするようにはできていないわけです。1時間に1度は立ったり、ひねったり、カンタンなストレッチをしてみる。体が固まりすぎないように、時々リセットすることが大事です。

オススメは、伸び!緊張した社会のなかで、人が伸びをしなくなっていると言われています。たとえば、会社のフロアに怖い上司がいたら、「伸び」なんてしにくいですよね。なんだか伸びをしたいなと思ったら、体が求めている証。「伸び」をしましょう。犬も猫も寝て起きて動き始めるときには必ず伸びをします。それは本来の動きやすい骨の位置になるよう自分で整体しているんですね。

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むくみ解消の要。ふくらはぎは第二の心臓。

会社員の方だと、足のむくみについても相談されることがあります。ふくらはぎの筋肉は、第二の心臓とよばれているんですね。体の血液を循環させる上で、すごく大事なんです。だから、時々足首を曲げ伸ばししたり、可能なら歩きましょうとアドバイスしています。

人の血液は、動脈血と静脈血があります。動脈血が栄養をとどけて、静脈血が不要物を回収してくれています。ふくらはぎの静脈血は、重力に逆らって、上に上がらないといけないので、ちょっと大変なわけです。

ちょっと歩いてみたり、動かしてみたりして、ほぐすことで、頑張っているふくらはぎをサポートしてあげてくださいね。

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ハッピーな人は健康になりやすい?

このコラムも7回続けてまいりましたが、今回が最終回。最後に僕からお願いしたいことがあります。それは、自分の体の目を向けていただきたいということです。

たとえば、スマホを見る時間をほんの少し減らして、自分の体の内側の声を聞いてみる。最近、肩が凝っているかもしれない。むくみがちかもしれない。小さな変化に気づくようになります。そして動かしたり、伸ばしたり、温めたりと楽になった体の内側の声を再び聞いてみて下さい。大切なのはここからです。楽になった!という内なる声に注目すると脳はもっと良くなろうとします。小さくても良い変化に気づくと、体だけでなく心にもプラスに働きます。

自分はハッピーだと思っている人より、そうではないと思ってる人のほうが、6倍腰病になりやすい、という事実をご存知でしょうか。物事の捉え方が、健康に影響を及ぼすことを示した有名な研究結果です。

ハッピーな思考が、健康につながるのであれば、僕自身もそうありたいですね。今ボート日本代表のメディカルトレーナーをしています。マイナー競技と言われていますが、競技人口はレスリングとおなじ1万人。すごく面白いスポーツなんですよ。

選手一同頑張っているところを間近で見ると、僕ももっと頑張らなきゃと力をもらいます。2020年東京オリンピック、ぜひとも応援よろしくお願いします。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

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