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医療従事者インタビュー
教えて、黒須さん!
感染管理の専門資格である感染管理認定看護師であり、感染制御学の博士。
海外での活動経験もある黒須人一見さんのインタビュー。
第4回目のテーマは、大学院での研究について。
ふつうの看護師だった黒須さんがなぜ大学院に通うことになったのか。
当時のエピソードとともに話していただきました。
黒須一見
Hitomi Kurosu
2020年2月7日(金)
感染管理認定看護師の資格を取得して、2〜3年仕事をした時、いろんな疑問が出てきてしまいました。こんな場合はどうしたらいいんだろうとか業務上の具体的なことです。
自分のまわりに解決方法を知っている人がいないので、立ち止まることが多く悩みました。
そこで、ある先輩に相談したら大学院をすすめられました。
「学べば解決できるよ」 と。
そして、思い切って通うことに。2008年から修士2年と博士3年の計5年間です。
土日でメインの講義受けて、実験は仕事が終わった後にこなす。忙しかったけど、充実の日々でした。
どうしてもわからないことが3つありました。
それを解決したいと思って入学したのですが、
「この問題はこの先生に相談したらいいよ」 「あの問題ならあの先生!」 などと周囲の人が相談先を教えてくれて、先生方も丁寧に指導してくださり、すべての疑問が3ヶ月で全部解決してしまったんです。
専門家は術を知っている。解決するためには現場で奮闘するだけでなく勉強しなければいけないと改めて思いました。
40代で新しい友達ができるのも新鮮でしたね。海外の学会に行く機会も増えた。教授も「こんな実験やってみたら?論文を書いて発表しましょう」と背中を押してくれる。
5年間はあっという間に過ぎていきました。
大学院で力を注いだことの一つに、マスクの研究があります。
結核の患者さんを受け入れるような病院に勤めていたので、サージカルマスクと呼ばれる一般的なマスクよりも一つ上の性能のN95というマスクを使用することが多かったんですね。
結核の患者さんを対応する時このマスクをつけるんですけど、苦しいんですよ。高い密閉度とフィルター性能。安全性はバッチリなんですけど、動いていて苦しい。活動時の快適性も考慮するとどのマスクがいちばん優れているのか。各社から販売されているマスクの性能を調べはじめました。
マスクを調べていくと、元々欧米人仕様で作られていることもわかってきました。日本人は顔が小さいのでフィットしないこともあるんです。
日本のメーカーさんが日本人の顔にあわせてつくっているマスクがあることもこの時に知りました。
医療現場では企業と同様にコストも重視されるので、大量生産で安いものが導入されがちです。
でも、現場での使いやすさやスペックも大事。
そこで、本当は何が良いのか、各社の製品を比較して論文にまとめました。
嬉しいことに論文についてメーカーさんから良い反応をたくさんいただきました。
「自社製品は検査するけど、他社さんのものと比べてテストする機会が少なかったので大変参考になります!」と。
その後は、マスク着用の人体への影響についての研究に没頭。マスク着用したまま呼吸し続けて大丈夫なのか、呼吸困難にならないのか、といった内容です。論文は学術誌に掲載していただきましたが、自分一人だったらここまでできなかった。あらためてまわりのみなさんへの感謝の思いが湧き上がりました。
(Vol.05へつづく)